ソニー、IBM、GEなどの大企業から、4U Lifecare(フォー・ユー・ライフケア)株式会社、という小さいヘルスケアのベンチャー企業の経営に飛び込んだ私には、立命館大学客員教授、筑波大学非常勤講師、という教育に関係した仕事というもうひとつの顔があります。このDreamに参画し、推進したいと考えた根幹はまさにこのバックグラウンドにあります。

【データのプロは大企業と外資系に集中】
ビックデータを活用したい企業は大企業ばかりではありません。データを活用することの恩恵は企業の規模には関係ありません。
しかし人材の観点から見ると、有名な大学を卒業したデータ・サイエンティストはほぼ大企業やGAFAのような外資系企業に参画していきます。ある一定の規模以下の企業は、そのような人材を獲得できず、また教育することも難しい状況にあります。

一方で、「データを活用する」ということを雲の上のことのように捉えて、諦めている人も多いように見えます。
自社にはデータが溜まっていない、データを扱える人材がいない、高度なシステムを導入していない、ノウハウがない。
だから、できない。そう決めていらっしゃる方が多い。

【実はシンプルなデータ・マーケターの仕事】
事業を運営していく中で、必要なデータの活用は実はもっとシンプルです。
・まず何かアイデアを考える
・そのアイデアを適用する現実の状況を「現実のデータ」で見える化する
・アイデアを適用してみる
・適用した結果を「使用後のデータ」を使って評価する
・思ったように行かなかった場合はその理由を「データ」を使って考えてみる(仮説)
・その仮説がうまくいきそうだと思ったら、「対策としてのアイデア」としてまた提案、適用する
・これを繰り返す

なんなら、黒板に書いたいくつかの数字だけでも、上記の流れを作ることができます。
しかし、これをやっていない人が驚くほど多い。勘と経験に頼り、結果がよければOK、だめだったら忘れる。
人数が多かった時代、経費に余裕があった時代には許されていたこのようなアプローチは、現在では通用しなくなっています。

もし、地方のスーパーや企業で、上記のような「データを基本として仮説検証を回すやりかた」で仕事をする人がどんどん増えていったら、きっとその地方は明らかに強くなります。
そのために必要なのは、データサイエンティストではありません(いえ、いていただいてもいいのですが)。
会社の仕組み、基本的なマーケティングの考え方がわかった上で、すでに世の中にあふれている活用できるデータやツールの使い方を覚えてシンプルなステップを愚直に踏んでいくことができる人材こそが必要です。

【Dreamが考える地方で活躍する人材に不可欠なスキルとは】
Dreamを作ろう、といわれたときに、「そういう人材を専門学校で育てたい」と言われたときに私は驚いたと同時に本当にうれしくなってしまいました。全国に広がっている専門学校それぞれでそういう人材が育っていき、地域を支えていく。そうすればどんどん地方は元気になり、強くなる。そんな未来を感じることができたからです。

もうひとつ加えさせていただくとしたら、ユーザー視点、マーケティングの考え方をきちんと基軸にした学習コンテンツを提供することの重要性です。大学で教える中で気づいたのですが、就活をするタイミングになっても一般的な学生は企業にどんな部門があるのかをよくわかっていません。営業や人事や広報があるのはわかっても、情報システム部門が社内にクライアントがいて、そこに対してサービスを提供している、ということは全然ピンときません。経理・財務が経営と密着したクリエイティブなアイデアが必要な部門だということもほとんど知らないです。
会社にどんなところがあり、データを使って考えることがどこでもとても重要なのだ、ということを理解してもらうことは、これからのデータ・マーケターに不可欠の知識であり、スキルではないか、と考えています。

今理事会を中心に、学習コンテンツの作成に注力していますが、上記の点を大切にしたい、私はそんなふうに考えています。
それが成功したら、私がDreamで実現したいとワクワクした「専門学校から地方を変える」ことに一歩近づくことになるのでは、と考えているのです。

ビッグデータマーケティング教育推進協会 理事
伊藤 久美