4班、計16名の学生が参加

 

2023年1月23日にJTBトラベル&ホテルカレッジ様にて、産学連携授業「データマーケティング講座~旅館経営の問題を解決するビジネスプランを考えるワークショップ~」の第5回が開催されました。

前編での学習テーマ発表を受け、後編では学生達が企画したビジネスプラン発表の様子をご紹介いたします。

 

学習テーマ

今回の課題は「御宿 瑞鷹(おやど ずいよう)の売上向上、新規顧客獲得案を考える」でした。

2022年12月23日の課題発表を受け、学生達はデータを活用し課題点や原因の洗い出しを行い、班ごとに解決にむけた具体案を考え、準備を進めてきました。
今回の発表形式は「学生達は旅館の従業員の想定で、販促会議の場で旅館経営者の定居様へプレゼンテーションする」という設定のもと、はじまりました。

 

講評者紹介

今回の授業の題材である「御宿 瑞鷹」を経営されている株式会社喜久多 専務取締役 定居様、株式会社True Data 執行役員 越尾様、Dream理事 伊藤に講評いただきました。

 

株式会社喜久多 専務取締役 定居 宏康様

 

株式会社True Data 執行役員 越尾 由紀様

 

Dream理事 伊藤 久美

 

学生によるプレゼンテーション

学生達は企画の立案に株式会社喜久多様から提供された「御宿 瑞鷹」に関するデータをはじめ、気象情報、認知度ランキングなど様々なデータを活用していました。
いろいろなアプローチから「御宿 瑞鷹」の強み・弱みについて考え、課題解決に向けて取るべき最善の戦略を見つけるため、3C分析、SWOT分析、SWP分析などのフレームワークを実施していました。
定居様は各班のプレゼンテーション後、鋭い質問を学生達に投げかけられ、ビジネスの現場さながらの雰囲気でした。
学生達によるプレゼンテーション内容を一部ご紹介いたします。

 

Dream編集部が注目した各班の発表ポイント!

【1班】自社と外部のデータをもとに現状分析

 

瑞鷹から提供された売上データを分析し、8月の売上に注目。
RESASを活用し、滞在人口の月別推移データを提示し、8月に湯河原にはどんな観光客が来ているのかを分析していました。
滞在人口率は、当該自治体の実際の人口に対して、月間平均で何倍の滞在人口が来ているかを把握することで、その地域がどれだけ活性化しているかの指標として活用することができます。滞在人口率を平日のみの月間平均で見れば、おおむね買い物客や通勤者・通学者などをどれだけ域外から集められているか、休日のみの月間平均で見れば、おおむね観光客をどれだけ域外から集められているかが把握できます。
ただし、地域によっては平日の方が観光客が多い場所もあるため、立地条件、交通手段や近隣施設からのアクセスなども考慮し、湯河原の実情に応じてデータを読み解きました。

 

【1班】大学生をターゲットにしたお見合いバスツアー

 

夏休み期間の比較的自由に動ける大学生をターゲットに設定。
「お見合いツアー」にすることで、観光としての湯河原の海と山の体験だけではなく、新たな”出会い”も提供。確実に集客するために、個人の観光ではなく団体旅行とし、バスという移動手段と宿泊を組み合わせた2泊3日のパッケージ企画にしていました。

 

【2班】リピーター獲得に向けた施策

 

「会員カードを作成し、バースデー特典などをつくる」、「サブスクリプションサービスを展開する」、「万葉集をイメージした客室づくり」など複数回利用したいと思わせる工夫が感じられる提案がありました。
また公式LINEの使用やSNS限定特典の実施など、2班の発表はすぐにでも導入できそうな具体的な提案でした。

 

【3班】認知度ランキングの活用

 

「湯河原と言えば…」と当初学生達は湯河原についてイメージがわかなかったそうです。
認知度ランキングを活用し、認知度をデータで示し、自分達の所感と合わせて現状把握をしていました。
こういったランキングは、特定のジャンルにおいてどれくらいの割合で想起されるのか計測し、高い割合で名前があがるものは認知されている(純粋想起率が高い)ということになります。また、ある年代においては認知度が高いものの、それ以外には認知されていないといった実態を把握することができます。

 

【3班】生産性向上に向けての働き方改革の提案

 

生産性をあげるために、働く側の環境について考えています。
旅館の運営に航空業界で多く取り入れられるようになった「4勤2休制度」を提案していました。
実は24時間、365日営業が当たり前と言われていた旅館も、休館日の設定が常識となりつつあります。旅館に休館日を設けることで、従業員の休日確保やモチベーション向上、また館内の設備点検、研修の実施が可能になるなどメリットも多くあります。
従業員の休みを増やすために業務の効率化に取り組むことで、残業時間も減るかもしれません。こういった流れがコスト削減にもつながり、ハード面への投資や従業員が自身の業務に専念できるようになり、結果的に顧客満足度が向上するという良いサイクルが生まれそうです。

 

【4班】旅館を別荘のような滞在利用へ

 

日常から離れ、心も体も癒してリフレッシュしていただく体験を「別荘」というキーワードでよりプライベートなひとときを楽しんでいただけるような切り口で提案をしていました。
プレゼンテーションの前半で、過去の宿泊者データや環境、立地条件について丁寧に分析できていたからこそ、後半では湯河原の気候が温暖で過ごしやすく、星空や自然が魅力であることを説明した際にとても説得力のある企画になっていました。

 

総評

株式会社喜久多 定居 宏康様

学生の皆様の英知を結集した努力が感じられる発表でした。
「御宿 瑞鷹」のためにたくさんの企画を提案していただきとても感謝しています。
どの提案も私達が「こういう企画があったらいいな」と楽しく感じられるような内容でした。各班に対する質疑のなかで「どうしてそうなったのか?」と根拠を問うような質問をたくさんさせていただきました。これはビジネスを考える際に、これからも求められていく部分になります。データを活用して根拠を説明できるようになることはとても大切です。
この経験を活かして、前進してほしいと思います。

 

株式会社True Data 越尾 由紀様

どの班もデータを根拠に仮説を立て、プランニングができており、短時間のなかでもしっかりまとめられていたと思います。
全ての班に共通していた点では、売上への意識が少し弱い気がしました。
どういう人に向けてどんなサービスを提供し、それによってどんな価値が提供できるのか。企画の内容だけではなく、いくらで売上をつくるのか、売上とコストという観点でもう少し整理ができればさらに良くなると思います。

 

Dream 伊藤 久美理事

本日の発表はどの班も作りこまれていて、学生の皆様の頑張りがとてもよくわかりました。
最初の班の「お見合いバスツアー」企画は斬新で驚きました。企画の考え方や他との組み合わせ方ができると思います。
2番目は、競合として下田との比較がデータを用いてよくできていました。学生向けのサブスクのアプローチも、割引やライトな料金設定で実施できれば広まりそうな企画だと思いました。
3番目は、プレゼンテーションがとても上手で、質問を受けたときの受け答えの姿勢が大変良かったです。またSWOT分析の活用や、湯河原全体をアピールしていこうという気付きがあった点は素晴らしいですね。
4番目は、データを使用しながら、「別荘×○○」とアイデアが広がってくる企画でした。
今回の発表で定居様から質問されていた点は、どの班も裏付けがないところでした。
これはデータを活用することで裏付けをすることができます。ぜひ今後に活かしてほしいです。

 

オブザーバーとして参加されていた坂本校長からもコメントをいただきました。

坂本 友理校長

今回の授業ではデータの重要性や、データを使いこなすことで説得力が増していくことを実感できたのではないかと思います。
質疑の部分で「自分の経験上、こう考えました」と回答している場面がありました。1人のデータでは個人の経験談で終わってしまいます。しかし、それを複数人に聞き、インタビューやアンケート結果としてまとめると1つのデータとして説得力が付きます。ひとり一人の意見が積み重なると、「若者の大半はこう考えているのならば、そうしよう」と相手に納得していただける材料になります。
また、地域と共に生産性を上げる観点があると、さらに良い企画になったと思います。例えば、地域を活性化したい人達と協力をする、地酒企画を考えるのならば地元の酒蔵とコラボレーションするなどがあります。今後こういった企画を考えるときには、周辺の人達を巻き込み地域を盛り上げるということもぜひ視野に入れてほしいです。

 

今回は「旅館の経営課題解決に向けて、学生達がデータを紐解きながらビジネスプランの施策をする」というとても実践的な取り組みでした。
学生の皆様には今回の連携授業で得た知見を活かし、就職活動だけではなく自身のキャリア全般で役立てていただきたいです。